ちょっと時代おくれな会長の一言

ひとこと ~第十回~

最近の建築で気になっていることがあります。

住宅で屋根の軒の出がやたら短いのが気になって仕方ありません。窓に庇も

ついてません。日本は湿気と雨の多い国ですから軒先はできるだけ伸ばして、

窓には必ず霧除け(庇のこと)をつけています。便所の小さな窓でも必ず霧除け

をつけます、長い軒や霧除けによって、雨や湿気から家を守ってきたわけです。

見た目にも大きな屋根に守られて家が建っている姿は、安心感があって、バラ

ンスもよく、美しく見えます。庇のことを霧除けと呼ぶのも我が国の気候の状態

をよく表しています。

こうゆう家が最近は造られなくなってしまいました。以前にも書きましたが、大手

ハウスメーカーはコストダウンが徹底しています。霧除けを1か所カットすれば

2万円コストが下げられます、年間1万棟で計算すれば2億円、軒を短く、霧除け

を省いて1棟で20万円カットできれば20億円コストダウンできます。数は力ですね

それでも、私は日本の家造りにこだわっていきたいですね、永い目で見れば一番

いいんですから。

 

我が国の木造建築は2000年の歴史があります。

それが、本物の証です、現代の我々も沢山学ぶところがあります。

 

注  : 飛鳥時代に中国から仏教とともに伽藍造営の新しい技術が入ってきまして、

     日本でも盛んにお寺が建てられましたが、法隆寺の金堂や塔の軒は長く、

     4m程あります。夢殿は直径が11mですが軒は3mもあります、中国には

     こんなに長い軒はありません。飛鳥の工人は、中国からの技術を鵜吞みに

     しないで雨が多く湿気の多い日本の風土に合わせて軒の深い構造を考えた

     わけです。                       (西岡常一 著)